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2010-09-24

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判例

故意免責の主張を排斥し保険金請求を認める

精神に障害を有していた方にかかる高度障害保険金支払請求事件において、貴重な結果を得ることができました。
事案は、境界性人格障害ないし双極性障害に罹患していたと推定される原告が、自宅マンションから転落し重傷を負い、肢体不自由両下肢機能障害1級という程度の後遺障害が残存することになったことに関して、高度障害保険金の支払いを請求したところ、被告において、故意免責を主張し、これに応じなかったというものです。
判決は、精神障害が被保険者の自由な意思決定能力を喪失ないし喪失と同程度に著しく減弱させていたのかどうかを判断するにあたっては、純然たる自然科学的評価ではなく、保険契約者と保険者との間の高度の信頼関係を一方的に破壊したか否かの観点からされるべきとし、?精神障害罹患前の本来の性格・人格、?自殺企図に至るまでの言動、精神状態、?自殺企図行為の態様、?他の動機の可能性等を総合的に考慮するという従前からの枠組み(大阪高裁H15,2,21金商1166/2等)に従いつつも、境界性人格障害あるいは双極性障害という精神障害の特性、例えば、近親者から見捨てられることを過度に恐れ、これを避けるために衝動的な自殺企図行為に及んでしまう点などを考慮した上で、被告の主張を退けています。なお、本件は、島 由美子弁護士、兒玉修一弁護士が担当しました。
この判例は、消費者法ニュース2010/10号に掲載予定です。