子どもが勝手に契約してしまったら?(弁護士 幸田直樹)

 2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、成人すると何が変わるのでしょうか?

 例えば、未成年者は、契約などの法律行為をするには、保護者(法定代理人)の同意が必要で、この同意がない場合は、事後的に取り消すことができるようになっています(民法5条)。

 では、どのような場合にでも事後的に取り消せるのかというと、いくつか例外が定められています。

 そのうちの一つとして、未成年者が、相手に対して、成年であると偽った場合(民法21条には、「詐術を用いた場合」とされています)です。これに該当してしまうと、取り消すことができません。

 この「詐術を用いた場合」に該当するかに関して、対面での取引以上に、インターネット関係、例えばスマートフォンのゲーム課金などであれば、問題が複雑になってしまいます。

 例えば、親が、自分のスマホを子どもに使わせてスマホゲームをさせるという場面。

 最近のスマホゲームは、基本料金は無料であるものの、課金によってアイテム等を入手したりできるものが多くあります。

 親としては、だいたい無料でプレイできる範囲を想定して、子どもにスマホゲームをさせているのではないでしょうか。

 しかし、子どもが(どの程度認識しているかは別にして)、親に許諾を得ることなく課金してしまい、その金額等も高額になることが多いのもあいまって、トラブルとなってしまうケースがあります。

 この場合、上記の未成年者の法律行為として、取り消すことはできるでしょうか?

 ここで問題となるのは、①そもそも、親が使用したのか、子どもが使用したのか。②子どもが使用したとして、「詐術を用いた」に当たらないかになります。

 まず、①との関係では、スマホゲーム会社等からすれば、親のスマホ端末であれば、親が使ったと考えるのが通常ですから、使用の経緯、発覚の経緯を詳細に述べる必要があります。

 特に、課金の発覚まで時間がかかっていたり、発覚してからの対応が遅くなっていると、親の使用と考えられる方向に傾くのではないでしょうか。

 次に、②との関係ですが、スマホゲームでは、通常、課金に際して、何らかの年齢確認を行っていることが通常です。例えば、18歳以上ですか?との質問があった際に、「はい」と答えた場合、形式的にみれば、これは詐術を用いたように見えます。

 しかし、このように考えると、未成年者は判断能力が未熟であるが故に保護するという趣旨が損なわれてしまうこと、対面と異なり背格好の確認ができないことは事業者においても想定しておくべき事情からすれば、不適当と言えるケースが想像できます。

 そこで、具体的に、未成年者の年齢や、その商品(本件ではゲーム)の性質(未成年者をターゲットとしているかなど)を踏まえて、未成年者か否かの確認方法(警告方法)が設けられているかを具体的に考え、詐術に当たるかを判断することとなっています(経済産業省作成の電子商品取引及び情報財取引等に関する準則にも同趣旨記載)。

 要するに、子どもをターゲットにしているスマホゲームでは、課金に保護者の同意が必要なことの警告、生年月日・年齢の入力等のみならず、説明書きも、ターゲットとなる年齢にも分かる簡単な言葉で伝えたり、簡単に課金できないようなシステム設定等をする必要が生じる場合があり、これらがない場合には、「詐術」には当たらず、事後的に保護者が取消しをすることが可能なケースが存在します。

 このように、事後的な救済が可能なケースもありますので、子どもが保護者の許諾なく課金等を行って、多額の請求で困った場合には、専門家への相談や、相手方への事情説明を遅れず行ってください。

 ただし、問題が生じてからの解決が難しいケースも多いです。 そこで、常日頃から、スマートフォンの取扱い、特に、子どもにスマホを渡すことがある場合には、その設定方法(有料の行動へのパスワード設定、クレジットカードとの紐付けの解除)など、注意を忘れないようにしてください。