労働時間(残業代)について (弁護士 幸田直樹)

 当事務所では、労働関係についての相談をお受けする機会が多く、その一つとして残業代の問題があります。

 残業代には、法的な論点が数多くあるのですが、例えば、労働者側、使用者側問わずに問題になるのは、実際の労働時間がどうなのか?というものです。

 労働者側でお聞きする場合では、始業前に作業することを会社から求められていたとか、タイムカードを切った後も仕事をしていたという場合。

 使用者側では、残業を止めていたのに勝手に残業されていたとか、外回りの仕事で適宜●●分の休憩時間を取るように言っていたのに休憩できなかったと言われている場合などです。

 この場合、どちらにしても、労働実態をいかに明確・詳細に述べることができるかが大きなポイントとなります。

 労働者として残業していることを主張する場合には、例えば、通勤のために改札を通った時間を交通系ICカード等から特定したり、会社退勤の際に、毎日家族へのメッセージやSNS等で退社する趣旨のコメントがあれば、そこから退勤時間を特定できたり、仕事でのメール、ビジネスチャットの履歴から仕事時間を推測したりするなど、その証明方法は、会社で行われている労働時間管理方法に限るものではありません。

 使用者側においては、漫然と残業を禁止していたと述べていたとか、休憩を取るように言っていたということにとどまらず、具体的に、行動をとっているかどうかが証明において問われてしまうことがあります。やはり、使用者には、労働時間の管理義務がありますし、実際に労働者が仕事をしていた場合には、残業を禁止していると主張したところで黙示的に残業を許容していたとされたり、休憩をとるように言っていたと主張しても実際にとれるように対応できていなかったなどと判断されたりすることもあります。

 使用者としては、労働者の健康を守る意味も含めて、労働者の時間管理をきちんと行うことが、結果として残業代の紛争も予防できることとなります。

 現在では、デジタルツールの発達により、労働者・使用者ともに労働時間の証拠化が容易になっております。

 なお、残業代請求については、2020年の労働基準法改正により、3年で消滅時効となっておりますが、附則で定められた再検討時期が2025年に訪れます。同時期に再検討が行われ、他の請求権と同じく消滅時効が5年になるのか否かも注目です。

 当事務所では、労働者・使用者双方の立場での労働事件の経験がありますので、労働者として未払い残業代があるのではないかと思われている方、使用者として残業代の紛争を予防したい方は、是非とも、一度、当事務所にご相談ください。